代表チーム イングランド代表

イングランド代表に黄金世代は再来しないのか。ゴールデントリオが活躍しない理由

ゴールデントリオが活躍しない理由

著者:ニール・ハンフリーズ
イギリス・ダゲナム出身。シンガポールのベストセラー著者の一人。小説4作品を執筆し「プレミアリーチ(2011)」は英メディア「FourFourTwo」の2012年の英国年間最優秀フットボール小説賞を受賞した。テレビ番組での脚本やホストも務め、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、英国といった国々でも幅広く活躍している。
Twitter: @NeilHumphreys

 かつてイングランド代表はデビッド・ベッカム、ポール・スコールズ、フランク・ランパード、スティーヴン・ジェラード、リオ・ファーディナンドといった選手を筆頭とするゴールデン・ジェネレーションを手にした時代があった。現在の代表チームにはゴールデン・ジェネレーションと呼ばれるような世代の選手たちは存在しない。

 代表チームでプレーしているのは、人々を興奮させ、攻撃的で大胆なプレーを持ち味とする若いハリー・ケイン、マーカス・ラッシュフォード、デレ・アリのゴールデン・トリオだ。しかし、ガレス・サウスゲート監督がリスクを取ろうとしない限り、彼らが何かを成し遂げることはできないだろう。

 サウスゲート監督は戦術に固執しがちだ。エリック・ダイアーとジョーダン・ヘンダーソンの2選手を中盤の底に置いた、創造性に欠ける、退屈でスローテンポな4-2-3-1のフォーメーションで戦っている。ダイアーとヘンダーソンが4バックの前に位置するイングランド代表はスピードに欠け、つまらない。彼らはボールを支配しているが、クサビへのパスは乏しい。

 10月5日ワールドカップ欧州予選でヨーロッパのフットボール界において小国ともいえるスロペニア戦に勝利することができたのはラッキーだった。前線に最も人々を興奮させることができる3選手を抱えているにもかかわらず、その試合は最もひどく、退屈なものだった。スロベニア戦でのベストプレーヤーは紛れもなく、デレ・アリだった。良い意味で彼は代表チームの戦術に沿ってプレーしようとしなかったからだ。

 トッテナム・ホットスパーのトップ下でプレーする彼は独創性に溢れているだけでなく、ボールポゼッションにおいても思い切った攻撃的なプレーをすることができる重要な選手となっている。アリがいなければ、イングランド代表はアイディアを欠いたチームとなってしまうだろう。アリがいなければ、前線のラッシュフォードやケインまでボールが渡ることさえもなくなってしまうだろう。

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